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高齢者の細胞で染色体異常が増加するのは酸化ストレスが原因-老化が染色体の維持に及ぼす影響を解明-

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所 分子腫瘍学研究分野 教授 田中 耕三
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 高齢者の細胞で見られる染色体の数の異常や断片化の増加は、ミトコンドリアの機能低下による活性酸素種の増加にともなう酸化ストレスによって、染色体不安定性(注1)が引き起こされるためであることがわかりました。
  • 本研究グループは、マウスでも同様の現象を報告しており、酸化ストレスにともなう染色体不安定性は、哺乳類細胞で共通してみられる老化現象であると考えられます。
  • 遺伝情報が安定に維持されないことは、老化とがんに共通する特徴であり、本研究はその原因の一端を明らかにするものです。

【概要】

遺伝情報が安定に維持されなくなることは、老化とがんに共通する特徴です。

東北大学加齢医学研究所?分子腫瘍学研究分野の朱楷林大学院生、田中耕三教授らの研究グループは、高齢者の細胞では染色体の異常や断片化が増加している原因として、ミトコンドリア(注2)の機能低下によって活性酸素種(注3)が増加することによる酸化ストレス(注4)が関係していることを明らかにしました。酸化ストレスは複製ストレス(DNA複製がスムーズに進まない状態)につながり、これが紡錘体微小管の安定化などを通じて染色体不安定性を引き起こすことがわかりました。同グループは、マウスでも同様の現象を報告しており、酸化ストレスにともなう染色体不安定性は、哺乳類細胞で共通してみられる老化現象であると考えられます。本研究は、老化によって遺伝情報が安定に維持されなくなる原因の一端を明らかにするものです。

本研究成果は、11月25日に学術誌npj Agingに発表されました。

図1. 高齢者の染色体の数の異常と断片化 (スケールバー: 5 μm)

【用語解説】

注1.染色体不安定性:細胞が分裂する時に染色体が均等に分配されない状態。

注2.ミトコンドリア:細胞内小器官の一つであり、酸素を利用してエネルギー(ATP)を産生するが、その過程で活性酸素種が生じ得る。

注3.活性酸素種:酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称であり、一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルなどが含まれる。DNA?脂質?タンパク質などと反応し、DNA変異?脂質の過酸化?タンパク質の変性などをもたらす。

注4.酸化ストレス:活性酸素種の産生が過剰になり、活性酸素種を消去する抗酸化機構とのバランスが崩れた状態。

【論文情報】

タイトル:Human fibroblasts from aged individuals exhibit chromosomal instability through replication stress caused by oxidative stress
著者: 朱楷林、陳冠、任ユエ伊、家村顕自*、田中耕三*
*責任著者:東北大学加齢医学研究所 助教 家村顕自、教授 田中耕三
掲載誌:npj Aging
DOI:10.1038/s41514-025-00299-w

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学加齢医学研究所
教授 田中 耕三
TEL: 022-717-8491
Email: kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL: 022-717-8443
Email: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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