本文へ
ここから本文です

Ge半導体と相性のよい電極材料としてBi?Te?を見つけ最適な接合方法を開発 ─ Siに次ぐ次世代半導体Geの本格的な実用化に期待 ─

【本学研究者情報】

〇グリーン未来創造機構グリーンクロステック研究センター
(大学院工学研究科 知能デバイス材料専攻 兼務)
教授 齊藤 雄太
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • シリコン(Si)の限界を超える次世代の半導体材料として期待されるゲルマニウム(Ge)ですが、電子が電気を運ぶnGeでは電極との接触抵抗が大きく、実用化の大きな障壁となっていました。
  • 研究チームは、電極材料としてテルル化ビスマス(Bi2Te3)を見出し、nGeと接合し反応させることで、原子レベルで滑らかな界面を形成し、電子の流れを妨げる"エネルギー障壁(注1"を、従来の最小値の約半分に当たる世界最小の26 eVにまで低減することに成功しました。
  • Siよりも高性能な半導体として注目されるGeでこの課題を克服した本成果は、Geを用いた次世代CMOSデバイス(注2の実現に向けた大きな一歩です。

【概要】

現在のスマートフォンやパソコンの性能を支えているのは、シリコン(Si)を使った半導体デバイスです。しかし、その性能をこれ以上高めることが難しくなってきています。そこで、次の主役として期待されているのが元素周期表でSiと同じ14族のゲルマニウム(Ge)です。ただし、Geを用いた半導体では、金属電極とnGeとの界面に生じる高い接触抵抗が性能向上の妨げとなっており、実用化の大きな課題でした。

産業技術総合研究所先端半導体研究センターの張文馨(チャン?ウェンシン)主任研究員と東北大学グリーン未来創造機構グリーンクロステック研究センターの齊藤雄太教授(大学院工学研究科兼務)らは、層状物質であるテルル化ビスマス(Bi2Te3)薄膜とn型Geを反応させることで、非常に電気が流れやすい界面の形成に成功しました。今回実現した金属/半導体接合では、電子の流れを妨げる"エネルギー障壁"を世界最小の値にまで低減し、理想的な接合(オーミックコンタクト(注3)が実現されました。本研究は、次世代の高性能半導体デバイスの実現を加速させる成果として期待されます。

本成果は、2025年7月11日付(米国東部時間)に応用物理に関する材料分野の専門誌APL Materialsのオンライン版で公開されました。

図1. (左)Ge-Bi-Te電極とGe半導体の断面の透過電子顕微鏡画像。原子レベルで平坦な擬似ファンデルワールス界面が観察できる。また、Ge-Bi-Teには原子が存在しない黒い線が観察されるが、これはファンデルワールスギャップであり、層状構造になっていることがわかる。(右)左図の上下方向の元素分析結果。Ge基板の最表面に、Teの一原子層が存在する。

【用語解説】

注1. エネルギー障壁:金属とn型半導体を接触させた時、n型半導体から金属に電子が流れるようにするために必要な最小のエネルギー。ショットキー障壁とも言います。

注2. 次世代CMOSデバイス:CMOS(相補型金属酸化膜半導体)デバイスは、電力効率と集積度に優れた論理回路の構成方式で、現在のスマートフォンやコンピュータなどに幅広く使われています。次世代CMOSデバイスは、これまでのシリコンに代わる新材料を導入し、さらなる性能向上を目指す新しい半導体技術を指します。

注3. オーミックコンタクト:電極と半導体との接合部分において、電圧をかけたときに電流が線形に流れる、いわゆるオームの法則に従う接触のこと。電流の流れを妨げるエネルギー障壁が小さいため、スイッチング素子や回路が効率よく動作するために重要な要素です。

【論文情報】

タイトル:Realization of Ideal Ohmic 亲朋棋牌 to n-Ge: The Key Roles of Ge-Bi-Te for Quasi-van der Waals Interface Formation
著者: Wen Hsin Chang*, Shogo Hatayama, Naoya Okada, Toshifumi Irisawa, and Yuta Saito*
*責任著者:産業技術総合研究所先端半導体研究センター 主任研究員 張文馨
東北大学グリーン未来創造機構グリーンクロステック研究センター 教授 齊藤雄太
掲載誌:APL Materials
DOI:10.1063/5.0278628

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学グリーンクロステック研究センター
(大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 兼務)
教授 齊藤 雄太
TEL: 022-795-7360
Email: yuta.saito.e5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs07 sdgs09 sdgs13

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ