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2025年7月30日カムチャツカ半島付近の地震で発生した津波の解析について(速報)

【本学研究者情報】

〇災害科学国際研究所 教授 越村俊一
研究室ウェブサイト

【概要】

2025年7月30日午前8時25分頃にカムチャツカ半島付近で発生した地震津波の即時解析を、東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータAOBAを用いて実施しましたので、その結果を速報します。

東北大学災害科学国際研究所、サイバーサイエンスセンター、大学院理学研究科、同情報科学研究科は、産学連携研究により「リアルタイム津波浸水被害予測システム」(注1)を開発し、2018年より東北大学発スタートアップ(株)RTi-castが運用し、TsunamiCastという予測情報サービスを展開しています(注2)。

地震発生時刻:2025年7月30日08:25頃
マグニチュード(Mw):8.8(米国地質調査所)
https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000qw60/executive
断層の中心緯度?経度?深さ:52.16N, 160.98E, 21.5km
断層メカニズム(走向、傾斜、滑り角):(198, 18, 51)※米国地質調査所のデータを参考
断層すべり量:16.0m
断層長さ?幅:504km×91km
※計算は、東北大学の津波解析コードTUNAMI-N2、沿岸の計算格子サイズ30mを用いて実施した。計算は地震発生から6時間まで。

【津波の特徴について】

22025年7月30日午前8時25分頃にカムチャツカ半島付近で発生した地震津波の特徴について、以下の通り考察します。

北海道から本州太平洋岸にかけて広い範囲で0.5m?1.3mの津波の来襲が予測されました。湾の奥で局所的に津波が増幅した場所も確認されました。大規模な津波遡上は見られませんが、局所的な増幅や強い流れにより漁業施設等への被害は懸念されます。 カムチャツカ半島、千島海溝沿いで発生した津波の既往の事例も踏まえ、津波の我が国への伝播経路としては、到達順に以下が考えられます。

(1)カムチャツカ沖の津波の波源から直接、日本太平洋岸まで到達する経路
(2)津波波源から千島列島、北海道太平洋岸、本州太平洋岸に発達している大陸棚に入射し、屈折?反射を繰り返して到達するエッジ波(※1)
(3)カムチャツカ半島沖から北太平洋西側に発達する天皇海山群、およびハワイ海山群に津波が到達し、同心円状に発生する散乱波(※2)

津波は,このような複雑な伝播経路を経て我が国に到達するために、海面変動の継続時間は非常に長くなるとともに、最大波が第一波から遅れて到達することが大きな特徴です。

※1 1994年の北海道東方沖地震津波では、地震発生から150分~300分にかけて、エッジ波と考えられる津波が最大波として北海道で観測されました。
※2 2006年の千島列島沖地震津波では、天皇海山群からの散乱波が、第一波観測後5時間以上経過してから、最大波として観測されました。

図1. 北海道沿岸の予想津波高

【用語解説】

注1. <参考プレスリリース> 東北大?大阪大?NEC?国際航業?エイツー、世界初、地震発生から30分以内にスーパーコンピュータを用いて津波浸水被害を推計するシステムが内閣府「津波浸水被害推定システム」として採用。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/05/press20170525-02.html

注2. (株)RTi-castは2024年4月に民間事業者初の津波の予報業務許可(許可第240号)を取得しています。
https://www.rti-cast.co.jp/news-20240809-01/

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学災害科学国際研究所
教授 越村俊一(株式会社RTi-cast?CTO)
Email: koshimura*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL: 022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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